interview
平木 愛
主に介護衣服を販売するブランド“ハート&アシスト”の代表。鍼灸マッサージ師として介護現場に従事している経験から、日ごろ接する高齢の方でも着やすい服を多数展開。着やすいながらもおしゃれなアイテムが多いことも特徴。
訪問マッサージという仕事を通して、介護現場と日々関わっていらっしゃる平木さん。
介護の業界に携わるからこその悩みや事業に活かせることというのが多くあることがわかりました。
今回は、そんな平木さんに、ブランドを始めたきっかけや介護業界に携わるからこその悩み、これからの展望などをお話いただきました。
ハート&アシストを始めたきっかけ
——— ハート&アシストを始めたきっかけを教えてください。
平木 愛さん(以下、平木):2001年から鍼灸マッサージ院を個人で開設しました。鍼灸とあん摩マッサージ指圧師の資格を持ってまして、寝たきりの方だったりとか、半身が麻痺している方のもとへマッサージにお伺いするという仕事もしています。
そういった介護を受けられている方のなかには、やはり服の着脱に困っている方がすごく多くいます。もちろん、寝たきりの方でも着替えが楽になる機能をすごい重視した服はあります。
ただ、自分の身なりを整えてみたい!と思わせるような、そんな一歩で作られた服は、まだほとんどなかったので、患者さんにも案をもらいながら、色んな業者さんを探して作ることを始めました。
——— 着物のリメイクは初めからされていたのですか?
平木:初めから着物を使っていたわけではありません。
もともとは、滋賀県で活動していることもあり、地場産業である高島縮を使って洋服を作っていました。
高島縮は綿なので、洗濯もしやすく、肌への負担も少ないです。
そんな中で、活動を始めてから1年ほど経ったときに、私が介護服を制作していることを知っている方から「着物を服にすることはできないですか」と相談を受けて、着物を使い始めるようになりました。
着物に対して思い入れはあるものの、本人のご家族の中にも着物を着用する方がおらず、どうすればいいか悩んでおられました。
他の患者さんのお宅に伺った際にも、処分しなければいけないけど、思い出がある分、処分できないという声を多く聴いていたので、今ある大事な資源である着物を有効活用していきたいと思うようになりました。
ハート&アシストってどんなブランド?
——— 現在は着物のリメイクを中心にされているのですか?
平木:今は介護が必要で、服の着脱も難しい方や介護をする方が楽になるように、高島縮で介護服を制作するのと、主に自分で服の着脱ができる方用に着物カジュアルの洋服を制作しています。
どちらの服も、着脱が楽になるように作っていますが、着物は伸縮性がないので、介護が必要な方には高島縮の洋服をおすすめしています。
——— 基本的には、高齢者向けに洋服を販売されているのですか?
平木:はじめは、高齢者の方だけに服を販売していました。
しかし、今あるものでなんとかしようと思うから必要ないと言われたりもしました。理由をお聞きすると、もう人生短いから勿体ない、今更おしゃれしようと思わないなど、消極的な理由が多くみられました。
でも浮かない顔をされているように見える…
そんな表情をみて、生きている限りは、パーソナルな表現を諦める必要なんかないのではないかと強く思いました。
同時に、他の世代の方にも知ってもらえたら、本人は消極的であっても、プレゼントなどで、ご本人へ届くのではないかとも考えました。
そこで、着脱が楽にできて、且つ自分をキレイにみせてくれる服の存在をもっと広く知ってもらわなければと思いました。
なので、自分たちだったらどんな服を着たいかなという目線で、作ったりということも始めました。
介護業界に着物カジュアルを広めようとするからこその悩み
——— これまで、介護服にはおしゃれな服というのはなかったのですか?
平木:私自身、機能性重視のみではなく、機能性とおしゃれが両立している服がないことを不思議に思っていました。ただ、いざやってみるとそもそも認識されていないんだなということがわかりました。
“そもそも、服の脱ぎ着が楽ってなんなん”というところからのスタートで、そこの認知が難しくハードルになっています。
介護現場では、生活面で必要最低限な支援以外の、介護を受けているご本人のパーソナルな部分に対してのケアまでが、人手不足により、なかなか難しいのではないかと感じています。
服の脱ぎ着に5分、10分とかかり、着替えることに消極的になってしまう可能性があるのが、体を動かしにくいというハードルが下がり、着脱の時間短縮になったり、更に気分が高揚するようなデザインだったりしたら、自分で服を着てみようと積極的になれるのではないかと考えています。
活動するうえで、大切にしていること
——— こだわりや大切にしていることなどはありますか?
平木:特に年を重ねると、スタイルを隠したいと考えている方が多いので、、おしゃれに重きを置きすぎないことを意識しています。脱ぎ着が楽な服というのには、スタイルをカバーできるというのも含まれているんですよ。
また、自己表現を加齢とともに消極的になるのではなく、服を通じて積極的にしてほしいという想いでつくっています。
これからの展望
——— これからの展望や計画などがあれば教えてください。
平木:着物でいうと、捨てるという概念を変えたいと思っています。
今ある着物は捨てられゆく存在であることは間違いないと思います。ただ処分するだけ、みたいには思ってほしくないなと感じたので、着物と直接かかわる中で、何かできたらいいなというのがあります。
もう1つは、多職種連携をしたいです。たとえば、今の活動だと間接的にでもアパレル企業が私たちを助けられる可能性があります。おしゃれな服を着たら、外に出てみようという気が起こったりして、リハビリに積極的になることもあると思います。人材難などでも困っていますが、もしかしたらそれに対して助けになれる職種があるかもしれません。
このように課題解決は、自分たちの中だけではなくて、意外と他のところからもできるかもしれないと思っているので、横のつながりを色んなところで増やしていければいいなと思って発信しています。
——— こういった業界・職種の方とつながりたいというのはありますか?
平木:特に衣食住です。食・住に関しては取り組まれてる企業さんもいるので、もっと情報共有をしたいなと思っています。
ただ、介護が必要な方という分野でしか使われていないので、そうではない方たちからはほとんど知られていないと思います。
とはいってもいずれは今、若い方や元気な方でもいく道だと思います。こういったことは若い時から知っておくことで、話せることが増えたり、いざとなった時に困ったりすることが減ると思います。
なので、衣食住の方とつながりながら、それを若い人たちに少しでも伝えていきたいです。
まとめ
今回は、ハート&アシストの平木さんにブランドや着物カジュアルを始めたきっかけ、介護業界に携わるからこその悩み、これから取り組んでいきたいことなどをお話いただきました。
平木さん、今回はインタビューをさせていただきありがとうございました。
着物カジュアルの中でも、より着脱のしやすい服に興味がある方はぜひハート&アシストの服をご覧になってみてください。
滋賀県内の商業施設などで展示販売を毎月おこなっているそうなので、気になる方、実際に商品を見てみたい方はこちらにもぜひ足を運んでみてください。
展示販売や商品情報などの最新情報はホームページやInstagramから入手できます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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