interview
新島 栄晃
福岡県で着物カジュアルブランド“FAR EAST FABRIC”を運営。「日常で使える着物」をコンセプトに、アロハシャツを中心とした着物リメイクアイテムを手の届きやすい価格で多数展開。
福岡県で着物カジュアルブランド“FAR EAST FABRIC”を運営している新島さん。
お話をうかがった中で、わかったことは1人でも多くの人に着物カジュアルを届けるためにしている日々の行動、そして着物に対する想いでした。
今回は、新島さんにブランドの活動内容や始めたきっかけ、こだわり、今後の目標などをうかがいました。
ブランドの活動内容
——— FAR EAST FABRICではどういった事業をされているのか教えてください。
新島 栄晃さん(以下、新島):使われなくなった着物を日常でも使えるシャツやパーカー、コートにアップサイクルしています。
——— オンラインショップでの販売のほか、店舗での販売もおこなっているのですか?
新島:店舗は北九州の工場や倉庫があるとこに1つあり、そこで販売をしています。あとは、お誘いがあれば、百貨店やショッピングモールにも出店をしています。
着物カジュアルを始めたきっかけ
——— なぜこのブランドや着物のリメイクを始められたのですか?
新島:弊社は会長である川俣が創業しました。
そもそものスタートは、古物商免許を持っている人しか入ることのできないオークション形式でものを売り買いする場で川俣が着物を買い取ったことです。
壺や、掛け軸、兜などがどんどん値段が上がっていく中で、着物はむしろ値段がつかず、最初の値段からどんどん下がっていきました。着物は無条件にキレイなもので、日本人として尊敬の念も持っているため、そんな着物が無下に扱われているのを見て、川俣は嫌に感じて、着物を購入しました。
ただ、買い取った着物のほとんどが女性ものだったため、自分で着用することも誰かに譲ることもできず、どうしようかと悩んでいました。
そして悩み続けたある時、ふと開いた雑誌の中にアロハシャツの特集があり、そこにアロハシャツの起源がハワイへ移住した日本人が現地の気候に合わせて着物をリメイクして作ったものだと書かれていたのを読んだそうです。
“これだ!”と直感的に感じた川俣が、すぐに職人を探し、アロハシャツを初めて制作してもらったというところからブランドの方向性が決まりました。
——— 新島さんはどのタイミングでFAR EAST FABRICに参加されたのですか?
新島:この会社を創り、販売を始めるタイミングです。会社を立ち上げる際にホームページなども必要になってくるため、川俣から声をかけられる形で参加しました。
私はもともと、経営コンサルタントとして、新規事業の立ち上げやプロデュースをしていました。そのため、川俣が描く着物リメイク服が世界に広がっていく世界を実現させるために取締役に就任し、ホームページの制作やどういった方にむけて販売するかの調査など会社のマーケティング戦略の全般を受け持っています。
着物をリメイクすることの難しさ
——— ブランドを運営していくうえで、あるいは着物をリメイクするうえでの課題などはありますか?
新島:誰も着物を縫えないんですよ。私たちは、着物を縫うことができる方に出会えたので、ブランドを立ち上げることができましたが、メディアなどで紹介されたりすると、100着ほど準備してもすぐに売れてしまいます。
そうすると、縫える人がいないと商品がなくなってしまいます。
もちろん誰かに教えることができれば、縫えるようになりますが、私たちみたいな小さなブランドになると、教育する時間が少ないです。
縫製できる方が1人しかおらず、その方にずっと教育させられないため、大変でした。
——— 今は着物を縫うことのできる職人さんが見つかっているのですか?
新島:職人を中途で採用し縫製責任者の元で学んでいただき徐々に縫える体制は整ってきていますが、世の中に必要とされている量をこなせているかというと厳しい状況です。
また国内生産で全て完結すると原価が高額になり、売価が高くなりすぎるという問題もありました。価格が高すぎると着物カジュアルが広く普及していくことは困難になると考え、2年前からベトナムの提携工場に依頼し、縫製を教えることで半袖シャツの一部を縫えるようになりました。
活動の上で大切にしていること
——— 活動していくうえで、こだわっていること・大切にしていることはありますか?
新島:これからもっと着物業界をよくしていきたいので3分ほど話を聞かせて下さい、とお客様にお話しを聞いたことがあります。
私たちのアイテムは誰かと被ることのない1点物です。だから、私たちの質問をするときの前提が“服に長けている、ファッション性が高い人”だと思っていました。
しかし、実際は服選びを苦手に感じている方や、普段はご自身ではなく家族に買ってもらっているといったお客様も多くいらっしゃいました。
その後もインタービューを重ねていく中で、日本の伝統文化を着ることや、ブランドの背景そのものを面白いと思ったことがきっかけで購入いただき、実際に実物を見て着物そのもののクオリティの高さや、生地の軽さからくる着やすさに惚れ込み、何度もリピートしていただいているというのがわかりました。
こうしたインタビュー結果から、着物そのものの良さを活かしながらオーソドックスで何年経っても飽きのこない普遍的なデザインを意識して作ることを心がけています。
これからの展望
——— FAR EAST FABRICとしての今後の目標や挑戦したいことなどはありますか?
新島:使われていない着物が数億枚あるらしいんですよ。それだけ数があると考えると、私たちが少しずつ作って、売っても結構限界があるんですよ。だから、マーケットを広げるという意味でも、世界から私たちの服を見られたいです。
そのためにも、世界が着物を自分たちの日常の服として取り入れるときに、どういうデザインとか、どういうのだったら着たいかというのを、もっと知っていくというのが展望として重要です。
もう1つが個人的な想いとして強いんですけど、おばあちゃんが残したお着物をリメイクして、それをお孫さんが着るのがすごく感動します。
こうした眠っている着物と向き合う機会というのは、これからどんどん増えていくと思うので、こういう打ち合わせのオーダーがあるよというのを知ってほしいですね。
おばあちゃんが残したものであれば、間違いなくその人個人にとって、思い出と面白みのある商品になると思うので、これをより仕組化してやっていきたいという展望もあります。
こうした活動を通して、眠っている着物をうまく形にして残していけると嬉しいです。
まとめ
今回は、“FAR EAST FABRIC”の新島さんにブランドの活動内容や始めたきっかけ、こだわり、今後の展望をうかがいました。
FAR EAST FABRICさんでは、アロハシャツをはじめとした着物シャツやジャケットなど男性が着用しやすい多くのアイテムを展開されています。
誰とも被らない服やおしゃれなデザインの服をお探しの方は店舗、もしくはホームページをぜひ訪れてみてください。
※お写真はFAR EAST FABRICさんから引用させていただきました。
FAR EAST FABRIC
ホームページ:https://fareastfabric.com/
Instagram:fareastfabric_jp
Facebook:Far East Fabric
店舗(ショールーム、事前予約必須):福岡県北九州市八幡西区本城東4丁目5-22 ネオビスビル1F
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